北アルプスの槍ヶ岳というと、登山をはじめた誰もが一度は登りたいと思う山のひとつです。
そんな槍ヶ岳の山頂付近にはいくつかの山小屋があります。
ここ数年はコロナの影響で山小屋の予約が以前よりも大変になりました。感染症対策でどの山小屋も定員を減らして営業しているので、一瞬のうちに予約が埋まってしまうことも多いです。そんなコロナ禍の2021年に宿泊したのが「ヒュッテ大槍」です。
前日に泊まった槍沢ロッヂについてはこちらから♫
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槍ヶ岳山荘の予約はむずかしい!予約は1ヶ月前から!
槍ヶ岳山頂から一番近い山小屋は「槍ヶ岳山荘」です。
槍ヶ岳の山頂である穂先の麓にあるので、槍ヶ岳に行くなら、どう考えても一番泊まりたい山小屋です。
しかし、槍ヶ岳山荘を予約するのはとても大変なんです。7月〜9月頃はシーズンになるので予約がすぐに埋まってしまいます。予約は宿泊日の1ヶ月前からWEBで受け付けているのですが、受付開始日の夜にはすでに満室になっていることが多いです。特に土日やお盆、連休などを挟んだ日程だと、予約開始後すぐに予約しないと瞬時に埋まってしまいます。
それでも何とか、昨年2021年は7月の最終週末に予約が取れました。もちろん予約をしたのは宿泊日の1ヶ月前の予約開始日です。仲間と協力して予約をしたので予約ができましたが、仕事もある平日だったりすると予約をするのはなかなか難しかったりします。
そんな難関を乗り越えての予約だったのですが、残念なことに2021年の夏はとても天気の悪い年でした。とにかく天気が悪く、7月最終週あたりから8月いっぱいの週末はほぼ雨でした。とにかく晴れる日がなかったんです。
そして、当初予定していた7月末の日程も天候が悪く、悩んだ挙句に延期をせざるを得ませんでした。
延期が決まって慌てたのは山小屋の予約でした。
当初の日程は7月末だったので、予約をしたのは6月末でした。6月末の時点では北アルプスはまだシーズン真っ只中ではないので、予約が難しいと言っても、まだ取れやすい時期だったんです。先にも書きましたが、槍ヶ岳山荘の予約ができるのは宿泊日の1ヶ月前からです。
そうなると、7月末の時点で予約が可能なのは7月末から8月末までの間になります。ここまでくると大体予想がつくかとは思いますが、7月末の時点ではすでに8月の週末の予約は埋まっていました。シーズンなので当然ですよね。
1ヶ月以上先の予約もできる「ヒュッテ大槍」!
そこで調べたもうひとつの山小屋が燕山荘グールプの「ヒュッテ大槍」です。
ヒュッテ大槍は槍ヶ岳から約900mのところにあります。槍ヶ岳山荘に比べると、槍ヶ岳山頂には決して近いと言える距離ではありません。そして、ヒュッテ大槍は東鎌尾根にあるので小屋から槍ヶ岳までは岩稜歩きをすることになります。通常の山道とは異なるので、更に遠く感じてしまいます。近い様で遠い感じです。
しかし、このヒュッテ大槍は予約開始日に制限がないんです。その年度に宿泊可能な全ての日程の予約が一斉にスタートするんです。2022年度は3月15日の9時から始まりました。
なので、槍ヶ岳山荘よりも先の日程の予約が可能なので、日程を立てやすいんです。
また、ヒュッテ大槍は燕山荘グループです。燕山荘グループの山小屋は本当に素晴らしいです。食事が美味しいのは定評ですが、それ以外のすべてにおいても本当に満足のできる山小屋です。
そういうわけで槍ヶ岳からは少し距離があるけれど、2021年はヒュッテ大槍を選択しました。1ヶ月以上先の予約ができるので7月末の時点でも9月以降は十分に空きがあり、予約が可能だったんです。
燕山荘グループの燕山荘の記事はこちらから♫
燕山荘グループの大天荘の記事はこちらから♫
ヒュッテ大槍ってどこにある?どんな山小屋?
ヒュッテ大槍が最初に建てられたのは1921年のことです。
その後、何度か雪崩に流されて、現在の「ヒュッテ大槍」が誕生したそうです。
【所在地】長野県松本市上高地国有林内 槍ケ岳 東鎌尾根雷鳥平
【標高】標高2,884m
【営業期間】2022年7月1日(金)~10月10日(月)
【直通電話】080-8728-8805 ※衛星電話です
【収容人数】収容96名 ※コロナ禍のため、2022年現在は半数に減らして営業中
◆宿泊料金
【1泊2食】大人14,000円/高校生12,500円/中学生9,000円/小学生8,000円
【素泊まり】大人9,000円
【お弁当】1,300円
ヒュッテ大槍は東鎌尾根にあります。槍ヶ岳までは約900mです。
ヒュッテ大槍から槍ヶ岳の頂上まで、東鎌尾根コースで約1時間かかりました。
表銀座コースにある大天井岳の「大天荘」からは約6時間です。
とってもこじんまりとした山小屋!
槍沢ロッジから約5時間で「ヒュッテ大槍」に到着しました。
遠くから見ると大きい様に見えたヒュッテ大槍でしたが、近づいてみるととてもこじんまりとした山小屋でした。大天井岳の大天荘と比べても小さかったです。
中に入ると靴のまま利用できるテーブル席がいくつかあり(写真左のガラス戸の奥側)、入り口のすぐ脇には受付がありました。その受付では宿泊のチェックインや、ランチや軽食、グッズなどの注文ができました。受付は外側にも内側にもあります。どちらもつながっていますが、靴を履いたままか、靴を脱いで利用するかの違いでした。(写真中央上部。テーブル席の奥側の明るい部屋。)
チェックインは通常の宿と同じで名前や人数を聞かれた程度だったと思います。
夕食の時間は到着時間によって決まる仕組みでした。時間の希望は聞かれなかったので、自動的に振り分けられるような仕組みでした。私たちは到着が早かったので、夕食の時間も早い時間に振り分けられました。
そして、山小屋と言えば、大切なのが朝食です。山小屋の朝食は実はとても厄介です。その理由は、日の出の時間帯とかぶってしまったり、出発時間が遅くなったりと自由がきかなくなることが多いからです。前年までは朝食は山小屋でとっていたのですが、こういう理由があるので朝食はお弁当に変えてもらいました。
チェックインが終わると靴を脱いで中に入り、部屋を案内されました。(小屋の出入口は食堂の写真右側のガラス戸のところです。)
小さくて過ごしやすい山小屋!トイレも食堂も近くて便利!
あまりにも小さい小屋だったので、宿泊スペースの写真を撮るタイミングを逃してしまいました。人が多くなってくると人が写ってしまうので、写真がむずかしい空間でもありました。
私が泊まったのは右下の東鎌Cでした。ヒュッテ大槍にはイラストの上手い方がいる様で、どのイラストも上手でわかりやすかったです。もともとの収容人数は96名とのことですが、実際にはそんな人数泊まれるの?と思うぐらいこじんまりとしていました。
しかし、逆にそれがとても快適で、小さいのでトイレや食堂が部屋から近く、とても過ごしやすい小屋でした。燕山荘の様な大きな山小屋だと館内で迷子になりそうになることがありますが、ここはそういうことはありません。深夜のトイレも気軽に行けました。
あまり参考にならない写真ですが、宿泊したスペースです。2人用だったのですが、2人で寝るのにギリギリの大きさでした。この空間に荷物を置いて眠るのは難しかったので、外側の荷物置き場に荷物を出して眠りました。
写真にもある様にコロナ禍なので、枕には使い捨ての枕カバーがついていました。布団には持参したインナーシーツを被せて使用しました。今はどこの山小屋でもそうですよね。
11時から14時まではランチもやってる!
お腹が空いていたので部屋に荷物を置いた後は、食堂でお昼を食べました。カレーと迷いましたが醤油ラーメンにしました。至って普通のラーメンですが、疲れた体に染み渡る味でとても美味しかったです。同行者はカレーを注文していましたが、そちらもとても美味しそうでした。
★ランチメニュー
・牛スジカレー 1,000円
・ラーメン(塩/醤油/味噌) 1,000円
・つけ麺 1,000円
★この他に滞在中ずっと利用できるフリードリンクがありました。種類はコーヒーや紅茶で、たしか500円だったと思います。土足で利用できるテーブル席の近くにそのコーナーがありました。
やっぱり美味しい燕山荘グループの夕食!
燕山荘グループといえば、何と言ってもご飯です!どの山小屋も裏切ることのないご飯の美味しさとボリュームです。今回、槍ヶ岳山荘を断念してヒュッテ大槍にした理由のひとつはご飯でもありました。槍ヶ岳に限らず、他の山小屋のご飯の写真を見ると、やっぱり燕山荘の方がいいなと思うことが多いです。それぐらい期待のできるご飯がでてきます。
この日の夕食です。右上のドリンクは白ワインです。ヒュッテ大槍では夕食に白ワインが出てくるんです。それに合わせてメニューも洋食風になっていました。山小屋のご飯は和食が好きですが、これはこれでとても美味しかったです。山小屋で食べられる料理とは思えないですよね。左上にあるのはパスタです。グループで取り分けて食べる仕組みでした。
普通なら頑張れば食べられる量だと思うのですが、疲れやその他で完食できませんでした。燕山荘グループは本当にボリュームがあるので、毎回完食できません。ごめんなさい。
夕食ではみなさんこちらのビールを飲んでいました。私は普段は毎日お酒を飲みますが、山ではあまり飲まないことにしているので飲みませんでした。
そして実は、夕食の時間を後になって変更をしてもらいました。チェックインの時に夕食は17時と言われていたのですが、実はその時間に間に合わなくなってしまったのです。その日の午後の天候は曇りでした。そのため槍ヶ岳の登頂を後回しにして、先に小屋にチェックインをしたのです。天気が良くなるのを待ちつつ、ご飯を食べたり休憩をしてから、山頂へと出発したので小屋に戻ってくるのが遅くなってしまったんですよね。
槍ヶ岳山荘周辺では携帯の電波があったので、登頂して穂先から下山した後に槍ヶ岳山荘の前で小屋に電話をして時間を変更してもらったんです。まあ、小屋のスタッフの方々は私たちが出発するのを見ていたので、間に合わないだろうとは思っていたとは思いますが、変更を快く引き受けてくれました。
小屋に戻ってこれたのは18時過ぎだったので、もっと早くに出発すればよかったと反省しました。槍ヶ岳は登頂する時間をいつにしようか迷う山でもあるので、判断が鈍ってしまったという理由もあります。何はともあれ、無事に小屋に戻れてよかったです。小屋のスタッフには感謝しかなかったです。あの時はありがとうございました。
山小屋のグッズ
山小屋の楽しみのひとつがグッズです。そこまで大きな期待はしないけれども、可愛いのがあればいいなあといつもひそかに楽しみにしています。
まずはバッジです。槍ヶ岳はバッジの種類がとても多いです。コース上の山小屋すべてに槍ヶ岳のバッジが売っているので、どこで買おうか悩んでしまいます。槍ヶ岳山荘でグッズを見る時間がなかったので、私はここで2つ書いました。左側のYamasankaのと右側の小屋オリジナルのものです。
話は逸れますが、本当にイラストが可愛いですよね。
こちらが手ぬぐいです。手ぬぐいはもう一種類ありました。これを買うためだけに小屋に立ち寄っている方もいたので、人気商品なのかなと思いました。グッズは他に巾着やTシャツもありました。手ぬぐいはあまりないデザインでとても可愛かったです。
槍ヶ岳が一望できる最高の場所!
小屋に到着した日は曇っていたので知らなかったんです。
ここから槍ヶ岳が一望できることを!
そういえば以前にどこかで読んだ記事に書いてあったんです。槍ヶ岳をきれいに見るなら、山頂直下の槍ヶ岳山荘よりもちょっと離れているヒュッテ大槍に泊まった方がいいと!
この日、朝起きて外に出てみたら、そこにあったのは前日に登った槍ヶ岳でした。前日は曇っていてここからは何も見えなかったので、これを見た瞬間に発狂したのは言うまでもありません。槍ヶ岳山荘からだとこの角度で槍ヶ岳を見ることはできません!槍ヶ岳山荘に泊まり、行きで東鎌尾根を通過していないのなら、帰りはここを通ることをおすすめします。槍ヶ岳が本当にきれいに見えます。
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動画だとこんな感じです。本当にきれいな早朝ですよね。
ヒュッテ大槍は既に書いた様にとてもこじんまりとした小屋なので、日の出の時間でも混雑することがなく、この景色を堪能できるんです。私が行った時には日の出の時間でも数えるぐらいしか外に人がいませんでした。本当に贅沢な空間ですよね。
表銀座が一望できる!燕岳の向こうから昇ってくる太陽!
泊まったことがある方はわかると思いますが、私が知る限り表銀座で日の出が一番きれいに見えるのは燕岳です。燕岳の正面からお日様が昇ってくる様なイメージです。そこから遠ざかるごとに日が昇る場所からも遠ざかります。2019年は燕岳、2020年は大天井岳、2021年は槍ヶ岳に登っていますが。毎年日の出から遠くなっていると感じます。
そういうわけなので、ヒュッテ大槍から見える日の出も日が昇ってくる場所は燕岳の向こう側からです。
日の出はこんな風にはじまりました。表銀座コースが一望できます。
写真右側には常念岳も見えています。前回は断念したのでいつか登りたい山のひとつです。
槍ヶ岳です。ヒュッテ大槍からはこんな風に見えるんです。
本当に贅沢な景色です。
登山をはじめた誰もが一度は登りたいと目指す山だという意味が本当にわかります。ここまでの行程がたとえどんなにハードだとしても、こんな景色に出会えるのなら頑張った甲斐があり、生きている意味さえもわかるようなそんな気がしてしまいます。
素朴だけどおいしいお弁当!
朝食はお弁当にしました。お弁当は出発日の朝なら何時でも受け取りが可能でした。おそらく前日の夜には完成しているのだと思います。小屋食とは違い、何時でも受け取れるところがとても良かったです。
出発日は日の出の時間に合わせて、先にチェックアウトし、その時点でお弁当も受け取りをしました。荷物を持って外に出て、日の出を見てから下山という流れでした。本当なら朝食を食べてから出発するのが体にはいいと思うのですが、日の出に時間を使ったので朝食は食べずに先に進みました。途中でいい場所があったのでそこで朝ごはんを食べることにしました。
こちらがヒュッテ大槍のお弁当です。五目ご飯のおいなりさんと、鮭、卵焼き、そして梅干しでした。本当に素朴なお弁当だったのですが、とても美味しくて感動しました。梅干しは本当に酸っぱくて全部は食べられませんでした。おそらく敢えて酸っぱくしているんだと思います。
日の出や時間を気にしなくていいのなら、どう考えても小屋食の方がボリュームもあるし美味しいのです。でも、いろいろなことを考えるとお弁当にしてもらった方が都合がいいです。実際にお弁当にしてもらっている人がほとんどでした。
山小屋のお弁当は初めてでしたが、いろいろな意味でとても良かったです。自由がきくお弁当の方が山歩きには便利です。槍ヶ岳の場合はコースが長いので、だらだらしていると一向に帰れません。そういう意味でもここではお弁当をおすすめします。
まとめ
いろいろあって決めたヒュッテ大槍でしたが、最終的には大満足できる山小屋でした。すでに書いた様にご飯はおいしいし、小規模なので移動が楽で混雑しない。そして、何より槍ヶ岳を一望できる景色が最高で、あれを見るためだけにまた登りたいと思うほどです。本当に今、思い返して見てもそう思います。
ただ、槍ヶ岳山荘と比べると槍ヶ岳からはやっぱり近くないので、登頂後すぐに休みたかったり、槍の穂先を見ながらのんびりしたい!と思う方には不向きな山小屋です。
実際に穂先から下山後に槍ヶ岳山荘の外の席でビールを飲んでいる人たちを見て、ここに泊まったら楽だったなあと思いました。次に行くなら槍ヶ岳山荘に泊まってみたいとも思いました。
人によって好みはあると思いますが、喧騒から離れてのんびり過ごしたい方にはヒュッテ大槍はおすすめです。小規模の山小屋なので、夕食後にはその日に出会った人たちが集まって飲んでいて、とても楽しそうでした。これは小さな山小屋ならではの風景だなと思いました。もう何年も前に雲取山の七ツ石小屋に泊まったのですが、その時もそういう感じでとても楽しかったことを思い出しました。
何事もメリットもデメリットもあるので一概には言えませんが、私自身の意見としてはとても満足できる山小屋でした。山頂から距離があることを除けば全くもって問題なしで、何度でも行きたいと思う山小屋でした。
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